資生堂はなぜ迷走したのか
――高級化戦略と海外M&Aの落とし穴
資生堂は2025年12月期の最終損益が520億円の赤字になる見通しを発表した。
前期に続く2年連続の赤字で、赤字額は過去最大である。
売上高は9650億円(前年比3%減)と一定規模を維持しているが、
・米国事業の巨額減損
・M&Aの失敗
・ブランド戦略の迷走
が重なり、利益構造が崩れている。
① 米国M&Aが重荷になった
資生堂は海外展開を強化するため、
・2016年「ローラメルシエ」買収
・2019年「ドランク・エレファント」買収
などを実施した。
しかし結果は――
✔ 米国ブランドは赤字続き
✔ 売却したブランドの代金も回収不能リスク
✔ 468億円の減損損失を計上
つまり、
「海外で当たるブランドを育てる」どころか、赤字を輸入した」状態
になってしまった。
② 10年前の「高級路線転換」は正解だったのか?
資生堂は約10年前、
・ツバキ
・ドラッグストア向け大衆商品
を切り離し、高級ブランド路線へ大きく舵を切った。
狙いは明確だった。
「安売り競争をやめ、ブランド力で勝つ」
だが、ここに大きな問題がある。
高級戦略が成功する条件は
👉「他社には真似できない価値」があること
しかし資生堂の場合、
・高級ではある
・品質も悪くない
・歴史もある
それでも――
『なぜ資生堂でなければならないのか?』が弱い。
③ トヨタと何が違うのか?
海外展開で成功している日本企業の代表が
トヨタ自動車である。
トヨタは世界で
✔ 壊れにくい
✔ 燃費がいい
✔ デザインも一定水準
✔ 中古市場でも価値が落ちにくい
と「誰が見ても分かる強み」がある。
一方、資生堂はどうか?
✔ 高級
✔ パッケージは美しい
✔ 日本ブランド
だが消費者目線では
「それ、他の化粧品と何が決定的に違うの?」
となりやすい。
トヨタは
👉 性能差が数値で見える
資生堂は
👉 価値が感覚的で分かりにくい
この違いは大きい。
④ 私の見解:
「自社評価」と「市場評価」がズレている
資生堂はおそらくこう考えている。
「うちは世界で通用する高級ブランドだ」
しかし市場はこう言っている可能性がある。
「値段ほどの違いは感じない」
つまり
企業が思っている“強み”と、消費者が感じる“価値”がズレている。
これはとても危険な状態だ。
高級戦略は
✔ 成功すれば高利益
✔ 失敗すれば客数激減
という“両刃の剣”である。
⑤ 今後の課題はどこか?
資生堂が立て直すには、
① ブランドの再定義
・誰向けの商品なのか
・何が一番の強みなのか
を明確にする必要がある。
② 海外は「選択と集中」
トヨタのように
「どの国でも通用する価値」を持てないなら、
無理なグローバル展開は縮小すべき。
③ 大衆市場の再評価
かつての
・ツバキ
・ドラッグストア商品
は「安定収益源」だった。
高級一本足打法は、
景気悪化局面では非常に危険である。
結論:
資生堂は「良い会社」だが「勝てる会社」ではなくなった
資生堂は
✔ 技術もある
✔ 歴史もある
✔ ブランドもある
しかし今は
「売れる仕組み」より「理想」を優先してしまった会社
に見える。
トヨタは
「いい車を作れば売れる」
資生堂は
「いいはずの商品を作っても、売れない」
この違いが、現在の業績差を生んでいる。